もちもち日記

TEAM NACSと関ジャニ∞とKiS-My-Ft2

『俳優 亀岡拓次』


1月30日、ユナイテッドシネマ豊洲にて初日舞台挨拶、参加。
Twitterに上げていた感想にちょこっと付け足して再掲でございます。



あらすじ
俳優の亀岡拓次(安田顕)は37歳の独身。次から次へと現場を渡り歩いては小さな役をこつこつと演じていき、スタッフからの信頼は厚い。彼に回ってくるのは主役ではなく脇役ばかりではあるものの、極力不平不満を口に出さず、撮影現場と酒場を行き来する地味な毎日を過ごしていた。ある夜、ロケのために訪れた長野県諏訪市で立ち寄った居酒屋『ムロタ』で若女将の安曇(麻生久美子)に恋をしてしまう。しかし亀岡は撮影のため都内から地方まで方々に飛ぶ上に、初めての舞台の仕事が入り劇団『陽光座』の稽古場にも通う日々。そんな中、極秘来日した世界のアラン・スペッソ監督の新作オーディションを受けるというチャンスが舞い込み、亀岡は憧れの監督の前で懸命に熱演する。ある時、脇役仲間の宇野(宇野祥平)に恋をしているかふと尋ねたところ、てっきり自分と同じく独り身だと思っていた彼が結婚していたことを知り、亀岡の心に火が付いた。亀岡は花束を手に安曇のいる『ムロタ』に向かってバイクを走らせる――。
出典:http://movie.walkerplus.com/mv58739/








正直に申しますと『俳優 亀岡拓次』は万人受けはしないと思います。
話に特別な山がある訳でもなく、大きなオチがある訳でもありません。何かを訴えかけるものでもありません。
この映画は、たまたま職業が俳優である“亀岡拓次”という1人の中年男性の平凡な日常の一部を切り取った映画です。
この映画を安田さんのファンでも、麻生さんのファンでも、横浜監督のファンでもない方におすすめ出来るかと聞かれたら私は「気になるんだったら見れば?」くらいにしか言えません。
逆を言えばファンの方にならぜひ見て欲しいと言えます。特に安田さんのファンの方。安田顕の全てを堪能出来るといっても過言ではありません。
あと見て欲しい方としたら、強いといえば「お酒と色っぽい女性が好きな中年男性」にならば是非ともおすすめしたい。
この映画は出てくる女性が本当に色っぽい。
麻生さんがお猪口で熱燗を煽る場面、三田さんが亀岡と話している場面…。これはたまらん大人の色気。画面越しで圧倒されました。
ただお酒を飲んでいるだけなのに、話しているだけなのに、あれほどまでの色気を感じさせる姿は男性必見ですね。あの色気を表現出来るお2人も素晴らしいのですが、それを映像におさめてしまう技術も素晴らしい。

映像の撮り方も面白い映画でしたね。
印象に残ったシーンですと、ロケバスで亀岡が運転手と話しているシーンがあったのですがその時に亀岡をちゃんと映さなかったんです。その感じがまた亀岡拓次っぽさが出ていて私は好きな場面の一つです。たぶんここは映画を見て頂ければ私の言わんとする事が伝わると思います。
なんというか、全体的に見ると古いフランス映画のような印象を受けました。
そして、印象に残ったシーンで欠かせないのが亀岡がアラン・スペッソ監督の映画のオーディションを受けるシーン。
淡々と読み上げられるト書きに沿って演技をする亀岡の姿に鳥肌が立ちました。
いつもぼんやりと撮影現場と居酒屋を行き来している彼の姿からは想像も出来ない演技への執念。やっぱり彼は役者としての野心は心の中にしっかりと秘めていますね。オーディションが終わり、演技の余韻に浸っている姿。その顔に浮かぶ恍惚とした表情にどこか色気を感じました。
貴方今までそれどこに隠していたのよと言いたくなりましたね。もう心臓バクバクです。

色々な所で観た方の感想がありまして、それを読んでみると書かれているのは「見終わるとお酒が飲みたくなる」というのが多くあります。私も、正にその通りだと思います。しかも飲みたくなるのは熱燗。辛口のお酒なんか良いですね。もしくは芋臭い焼酎のお湯割りなんかもたまりません。
何故お酒が飲みたくなるのか。私が思うに理由の一つとして挙げられるのは、というより最大の理由はズバリ安田さんの演技。
美味そうに飲まれるんですよねぇ。舐めるようにという表現がピッタリでした。
要は酒好きのおっさんの飲み方です。とにかく美味そう。あの飲み方は亀岡拓次という人物そのものを表していると感じました。
やはり、改めて考えてみると亀岡拓次という人物はどこにでもいる普通のおっちゃんなんですよね。そのおっちゃんがなんだか愛おしく感じてしまうのだから不思議でおかしくなりますねぇ。

物語りの中で麻生さんが演じる安曇が手伝う居酒屋にて、亀岡に地元の名物である寒天をサービスする場面があります。寒天はその後もちょこちょこ出てきます。
だからといって物語りのキーパーソンであるかと問われれば、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。そんな存在のものがあります。
この映画はそんな寒天のようなものだと思います。
寒天。おかずにも出来るしおつまみにも出来ればスイーツにも出来る。色んな顔を持っていて、食べる人によって姿を変える。柔らかいようで歯応えがある。そして、好きな人は好き。そんな不思議な食べ物、寒天。
この『俳優 亀岡拓次』という映画もそうだと思います。


これだけ映画の事を褒めて褒めて褒めちぎっておりますが、この映画に続編が出来るとすれば私は全力で反対します。むしろ、これの続編を作って欲しいと思う人はいますか?
もしも続編が出来たらコケる。99%コケる。
だってこの物語は完結したじゃないですか。あの終わり方を超えるものは無理でしょう。きっと横浜監督も続きを作るのは望んでいないのではないでしょうかねぇ。
物語は完結したのに、私たち観ている側の心の中ではいつまでも続いているような余韻を残したあの終わり方。私的には気持ちが良かったです。


映画のあと、何気なくドラマを観た時や映画を見た時、ふと画面の端に彼がいないかを探している自分がいました。私の好きなあの映画、あのドラマに、もしかしたら彼がいるかもしれない。いる訳がないのに無意識に探してしまうんだから、彼はその位自然に私の中に存在しているんです。
素敵な作品が生まれ続ける限り、亀岡拓次は今日も撮影現場と居酒屋を愛車に乗って行き来しています。
もしかしたら私が帰りに寄ろうとした居酒屋の暖簾の奥にちょこんと座ってお酒を飲む彼がいるのかもしれない。そんな事を考えると楽しいですね。